こちらの記事では主に社労士試験を受験される方に向けて労働基準法について解説していきます!
細かく学習範囲を分けて、詳しい解説や難しくない言い回しを心がけておりますので、
社労士試験を初めて受験される方にもおすすめです。
<こんな人が書いています>

・4度目の挑戦で社労士試験に合格
・都内某所の社労士法人にて10社程の入退社等の手続きや相談を担当しておりました
・現在は社会保険労務士として開業してお仕事募集中です!(ホームページはこちら)
今回は労働基準法解説の第9回目は第11条賃金の定義について解説していきます。
まさかの3回連続で定義の話ですが、労働者、使用者ときて賃金の定義です。
実務の面でも参考になるかと思いますのでお付き合いお願いします!
賃金の定義

条文をどうぞ!
第十一条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
受験生の時に「ん?すべて…?」となっておりました。それでは解説していきます!
ポイント
条文中が赤太字だらけですが、その中でも大事なのは「労働の対償」、「使用者が労働者に支払う」といった部分です。
もし特に手当がない基本給のみのお給料を貰っている方がいるとしたら、
その方が働いて会社(使用者)が支払うものなのでそれこそが正に「賃金」といったところですね!
それでは、例えば退職金や結婚祝金、見舞金等は賃金にあたりますでしょうか?
これらについては就業規則や労働契約等により、あらかじめ支給条件が明確であるかという点でその判断がなされることになります。
もしそのように規定があるものでしたら賃金として扱われますし、
規定がないなら恩恵的なものとして賃金に該当しないことになります。
仮に規定があっても上記の例だと結婚祝金や見舞金は「労働の対償」なのか?と漢字的に思われるかもしれませんが、
規定に「会社で労働してくれている労働者に支給する」と決めているということで「労働の対償」になっていると腑に落としておきましょう…
よく出てくる話として、旅館のチップは賃金に該当するのかといったものがあります。
これはお客さんが従業員に渡しているものであり、
使用者が支払っているものではないので賃金にはなりません。
しかし、そのチップが使用者に集められて労働者に一律に均等配分しているといった場合は、
使用者が支払うものとして賃金になります。
上記のように、「チップ」といっても労働者に渡る流れ等の内容が異なることで賃金になるか否かが変わってきます。
そうなんです…
賃金は「労働の対償」、「使用者が労働者に支払う」といった部分が大事と最初に書きましたが、
それだけではなく実態を見ていくこともとても重要です。
名称に沿った運用がなされていることを前提として、
賃金となるかどうか具体的なものについては下記の通りです。
<賃金に該当する>
・休業手当
・通勤手当(定期券含む)
・税金・社会保険料の補助
・スト妥結の一時金
休業手当というのは労基法26条に定められているもので、
会社の責任で労働者を休ませた場合に会社が払わなければいけないものです。
例えば経営不振による休業により労働者が働けない場合に支給されたりします。
次に通勤手当や定期券ですが、これも賃金になります。
実は、労基法上は使用者に支払いの義務はないのですが、
一般的には就業規則等に規定があったり毎月決まった額を給与に上乗せして支払われているものかと思います。
定期券として支給されている場合も後述する現物給付として賃金にあたります。
税金・社会保険料の補助ですが、
これらは法律上当然に支払わなければならないものとして使用者が補助や立替払いをすると賃金になります。
そしてスト妥結の一時金というのは、
労使で交渉が上手くいかず起きたストライキについて要求に応えて使用者から労働者に支払われるもので臨時の賃金といったところになります。
それでは賃金にならないものへ…
<賃金に該当しない>
・休業補償
・出張旅費
・生命保険料等の補助
・ストック・オプションによる利益
休業補償というのは労基法76条に根拠があり業務上のことでケガや病気をした時に支給されるもので、
上述した休業手当と名前が似ているので混同しないよう注意です!
区別のつけ方としては休業手当は会社の都合で休業になっているけど、
休業補償は労働者がケガや病気をしたことにより休業しているといったところでしょうか…
次に出張旅費ですが、これも上述した通勤手当と何となく似ていますね…
出張旅費は出張等で実際にかかった交通費を後から会社が支給するといったものです。
これも分かりやすく区別するとしたら、通勤手当は毎月決まった額を給与に上乗せしているけど、
出張旅費は領収書やレシートを見せてお金を受け取り、金額もその都度バラバラということで…
生命保険料等の補助についても上述の税金や社会保険料と似ているかもしれませんが、
これは法律上当然に支払わなければいけないものではなく、
任意に加入するものに対して支給されているので福利厚生的なものといった感じですね!
そして最後ですが、ストック・オプションというのは、
従業員や取締役などが自社の株を一定期間に事前に決められた価格で購入できる権利のことです。
この権利を付与された人は事前に決められた価格より株価が高くなってからでも、
その当初の価格で購入できて利益を得ることができるといったものです。
これについては、
そもそもその権利を行使するのか、利益が発生するタイミングや額についても労働者の判断に委ねられているため、労働の対償ではなく賃金にあたらないことになっています。
賃金に該当するかどうか、いくつか紛らわしい名称もあり大変でしたよね…
あとは現物給付のことに触れたらまとめに入るのであと少しお付き合いください!
現物給付について
現物給付とは住宅の貸与や食事の供与、被服の支給等のことです。
これらは一般的には賃金には該当しません。
ですが…ある条件下においては賃金に該当するので説明していきます!
まず住宅についてですが、
住宅の貸与を受けない人がいたとして、その人に一定額の住宅について手当が支給されている場合は、
住宅が貸与されている人でもその手当の額相当が賃金とされます。
また、住宅の貸与を受けている人からその費用を徴収している場合は、
その額によって賃金に該当するかどうか決まります。
徴収額が住宅の費用の3分の1以上なら、福利厚生として扱われ賃金に該当しません。
なので例えば社宅の費用が9万円だとしたら、その3分の1以上である3万円を徴収している場合は賃金にならないといった感じです。
次に食事の供与ですが、住み込み労働者に定期的に1日2食以上支給されていることの他に、
支給条件が明確に定められている場合にも賃金に該当します。
しかし賃金に該当している場合にですが、
住宅の貸与と同様に費用の3分の1以上を徴収しているなら賃金に該当しないので注意です!
最後に被服の支給ですが、
これについては作業服等が業務目的で支給されている場合は賃金となりません。
なので業務目的ではなくプライベートで着るような服が支給されているような場合は賃金に該当します。
しかし上記のような私的な服の支給を受けていても実費の3分の1以上を徴収していれば賃金には該当しません。
家も食事も服も3分の1以上か未満かどうかというのがボーダーラインですね!
いつもよりちょっと長くなってしまいましたね…
それではまとめの前に復習の条文お願いします!
第十一条
この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
まとめ

第11条賃金の定義
- 「労働の対償」、「使用者が労働者に支払う」の部分をまず意識する
- 上記を意識した上で名称に引っ張られず、規定があるか等で個別に実態を見ていく
- 現物給付が賃金になるケースを理解しておく
「結局ここも実態かよ」とお思いの方…非常にお気持ち分かります…
この記事を書くにあたって色々と調べてみると賃金とは奥が深いなと痛感しました。
今回もお疲れ様でした!
ご意見、ご指摘等ございましたらお問い合わせよりいただけますようお願い申し上げます。
次回から進行の関係上、条文が飛び飛びになります!
次回は第24条にある賃金支払の5原則を解説していきたいと思います。
また次回もよろしくお願いします!

