【労働基準法⑩】第24条賃金支払の五原則【原則の裏には例外あり】

労働基準法

こちらの記事では主に社労士試験を受験される方に向けて労働基準法について解説していきます!

細かく学習範囲を分けて、詳しい解説や難しくない言い回しを心がけておりますので、
社労士試験を初めて受験される方にもおすすめです。

<こんな人が書いています>
  筆者の似顔絵。
絵は苦手です。
・4度目の挑戦で社労士試験に合格
・都内某所の社労士法人にて10社程の入退社等の手続きや相談を担当しておりました
・現在は社会保険労務士として開業してお仕事募集中です!(ホームページはこちら

今回は労働基準法解説の第10回目は第24条賃金支払の5原則について解説していきます。

例外もしっかり学びつつになりますが、意外にも身近なものがあるので理解しやすいかと思います!

賃金支払の5原則

本を開いている

長めの条文です…どうぞ

第二十四条
①賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

②賃金は、毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

青太字のキーワードが5つありますが、これらで5原則です。

それでは一つ一つ見ていきましょう!

ポイント

改めて5つの原則を箇条書きにしてみます。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

各原則について解説していきます!

①通貨払いの原則

これは読んで字のごとく賃金は現金で払いましょうといったものです。

これは例外である条文中の但し書きが大事なのでその部分を抜粋します。

「~ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い~」

まず、「法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合」ですが、法令には現在定められているものはありません。

なので労働協約での話になりますが、通期定期券や現物給付で賃金を支払うといったことを決めている事業所さんもあるかと思います。

前回の賃金の定義に出てきたように定期券や現物給付は賃金の一種ですが、
それを給与として支払うには労働協約が前提になるということですね!

次に「厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合」です。

この「方法」とは3つに分けられますが、どれも労働者の同意が必要になります。

①労働者が指定する銀行等に対する預金又は貯金への振込み
②労働者が指定する金融商品取引業者に対する預り金への払込み
指定資金移動業者のうち労働者が指定するものの第2種資金移動業に係る口座への資金移動

①はいわゆる銀行への振り込みといったものです。

このような形でお給料を受け取っておられる方は多いかと思いますが、
意外にも実は労基法においては例外の方法だったなんてちょっとびっくりですよね!

預金と貯金の違いは預け先の違いとのこと…
・銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫など→預金
・ゆうちょ銀行、農業協同組合、漁業協同組合など→貯金

②は株式等の有価証券を売買しているような口座への振込みのことです。

しかし…そのように設定した口座では限られた金融商品しか買うことができないそうです。

そして③ですが、賃金のデジタル払いとも言ったりします。

スマホ等で決済に使える〇〇Payのような口座への振込みのことですね!

資金移動業というのは銀行以外の者が為替取引を業として営むことだそうです。
第1種とか第2種とかは預金額の上限によって決まるとのこと…

③についての注意点としては、
他の方法として①と②も選べるようにしておき、その指定資金移動業者について一定の説明(アカウントの有効期限等)をした上で、同意を得る必要があります。

あとは額が大きくなりがちな退職手当(退職金)については、
上記と同様に労働者の同意を得て小切手や郵便為替での支払いも可能です。

それでは直接払いの原則へ!

②直接払いの原則

これも字のごとく労働者に直接賃金を支払いましょうというもので、
使用者が代理人等に支払ってはいけません。

また労働者が賃金の債権を他者に譲渡した場合でも、
使用者がその債権の譲受人に対して賃金を支払うことは許されません。

そしてこちらの例外としては、労働者が病気である場合に使者に賃金を支払うことは差し支えないとしています。

こちらにおいて使者というのは配偶者や秘書等であって「社会通念上、本人に支給するのと同等の効果を生ずる者」です!

それでは派遣労働者に派遣先の使用者を通じて賃金が支払われる場合はどうでしょうか?

これについては、派遣元の使用者からの賃金を単に手渡すということであればこの原則に違反しないとされています。

次へ!

③全額払いの原則

ここも読んでそのままなのですが賃金は全額を支払いましょうということで…

なので例外部分をまた改めて抜粋していますので読んでみましょう。

「~法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」

まず「法令に別段の定めがある場合」というのは、所得税や住民税、社会保険料等が給与から引かれることです。

手取りになるとこんなに……
という気持ちになりますが天引きできる根拠はここにあったんですね!

そして次の「当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、~労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合」(ちょっと長いので大事な部分だけ…)です。

これはもっと要約すると労使協定がある場合ということです。

上記がある場合は、社宅費や組合費等を賃金から控除することができます。

本来は全額払いの原則に反することになりますが、労使協定が持つ免罰的効力により罰則の適用を受けずに済むということです。

しかし労使協定は罰則を受けないという効力はありますが、
それがあるからといって賃金から控除できるといったことにはなりませんから、
就業規則や労働契約等でそれを規定しておく必要があるので注意です!

念のためピンと来ない方のために…

就業規則を根拠として控除するね
      
それは全額払いの原則に反して罰せられるよ
      ↓
あ、じゃあ罰則は労使協定で免れるね
      ↓
就業規則と労使協定の二段構えで正常な運用に

このような感じです!

他に適法なものとして、
①欠勤控除②過払賃金の精算③債権との相殺についても書かせてください!

①は労働者が私用でお休みや遅刻等した場合に労働の提供がなかった限度で賃金を支払わないことは、控除にはあたらないので適法となっています。

②は前月分の払いすぎた賃金を当月に精算することは、
労働者の経済生活の安定を脅かすほどのものではないとしてこちらも適法としています。

③は使用者が労働者に対して債権(労働者が会社のお金を使い込んだ等)を有している場合に、
労使間でしっかりとした合意があり、労働者の自由意思によるものである限りその債権と労働者の賃金債権を相殺することは適法としています。

次の端数処理も違反ではないということも頭にいれておきましょう!

1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の合計に1時間未満の端数が出た時に、30分未満を切り捨ててそれ以上を1時間に切り上げる

1時間あたりの賃金額、割増賃金額1円未満の端数を四捨五入する

1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の割増賃金の総額の1円未満を四捨五入する

1か月賃金支払額(所得税等を控除した後の額)100円未満の端数を四捨五入する

1か月の賃金支払額(所得税等を控除した後の額)1000円未満の端数が出た場合に、その端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと

(似たような表現があってややこしいですが、たまに出題されます…)

それでは、次の原則へ

④毎月1回以上払いの原則、⑤一定期日払いの原則

こちらは併せて理解しておきましょう!

多くの方は賃金が毎月支払われていて、支給日は15日だったり25日とかの一定の期日かと思います。

これが④と⑤の原則に沿っているといったところです。

年俸制の方であっても、同様に毎月一回以上一定期日に賃金が支払われなければなりません!

そして「一定の期日」としていますから、
例えば月給の場合に支給日を「毎月25日」としたり、期日の変動が少ない「月の末日」とすること、
週給の場合に「月曜日」とすると定めても問題はありません。

しかし、月給の場合に「毎月第3月曜日」に支給するなどとすることは、
毎月期日が大きく変動(7日の範囲)変動することになるので認められておりません。

そして、また条文の中で認められている例外の部分があるので抜粋します!

~ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

この臨時の賃金の具体例としては、

・賞与(ボーナス)
1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当(欠勤がほぼない時等に支給。皆勤手当とは違う)
1か月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当(5年、10年勤めたような人へ支給)
1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給能率手当(営業成績が優秀だったりする人へ支給)

以上の通りとなっております。

罰則は下記の通りです。
割増賃金以外の場合30万円以下の罰金、割増賃金の場合6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

それでは、最後に復習で改めて長めの条文です!

第二十四条
①賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

②賃金は、毎月一回以上一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

まとめます!

まとめ

第24条賃金支払いの5原則

  • 5原則(通貨、直接、全額、月1回以上、一定期日払い)を覚えておく
  • 各内容について原則はもちろん但し書きや例外もしっかりと理解しておく
  • 端数処理についても各ケースについて頭に入れておく

ここ最近は毎回結構なボリュームになってしまっていますね…

今回も大変お疲れ様でした。

ご意見、ご指摘等ございましたらお問い合わせよりいただけますようお願い申し上げます。

次回は第25条非常時払いを解説していきたいと思います。

また次回もよろしくお願いします!

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