【労働基準法⑮】第15条労働条件の明示【絶対的と相対的】

メモ 労働基準法

こちらの記事では主に社労士試験を受験される方に向けて労働基準法について解説していきます!

細かく学習範囲を分けて、詳しい解説や難しくない言い回しを心がけておりますので、
社労士試験を初めて受験される方にもおすすめです。

<こんな人が書いています>
  筆者の似顔絵。
絵は苦手です。
・4度目の挑戦で社労士試験に合格
・都内某所の社労士法人にて10社程の入退社等の手続きや相談を担当しておりました
・現在は社会保険労務士として開業してお仕事募集中です!(ホームページはこちら

今回は第15条労働条件の明示についてです!

これから会社等で働かれる方や雇入れをする方、皆様に関係があり、
見ていただきたいところですのでお付き合いのほどよろしくお願いします。

労働条件の明示

条文はこちらです!

第十五条
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

(一部を後述します)

それでは解説していきます!

ポイント

まず「労働契約の締結に際し」とは、労働者を雇い入れる時にということで、
具体的には内定日や入社日のことです。

そのタイミングで労働条件を明示しましょうというものですが、
それには「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」があります。

ちなみに派遣労働者の場合は、
派遣元の使用者が労働条件について明示しなければいけないので注意です!

まずは絶対的明示事項についてですが、
これはその名の通り必ず明示しなければならない事項のことで下記の通りです。

<絶対的明示事項>

労働契約の期間に関する事項(定めがないならそれを明示)

有期契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間更新回数の上限を含む)

就業の場所及び従業すべき業務に関する事項(場所及び業務の変更の範囲を含む)

始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項

賃金(退職手当等を除く)の決定計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

退職に関する事項(解雇の事由を含む)

②について注意なのは、
その契約期間内に労働契約法18条に定める「無期転換申込権」が行使できることとなる契約を締結する場合です。

上記の場合に追加で明示しなければいけないものとして、
無期転換申込みに関する事項無期転換後の上記のような絶対的明示事項、後述する定めがあるものの相対的明示事項があります。

無期転換後に改めて労働条件を明示しましょうねということです!

覚え方は…

①契約(契約期間
②更新(更新等に関すること)のために
③就業(就業の場所、業務内容)頑張る
④始終(始業と終業や残業、休日のこと
⑤賃(賃金のこと
⑥貸(退職のこと)のために

6つのこと、契約更新のために就業頑張る、始終。賃貸のために…

無理くりですが、思い出す取っ掛かりになればと…!

そして、先ほどから出てきている「相対的明示事項」というのは、
事業所で定めているもの(賞与や退職金等)がある場合は明示しなければいけないといったものです。

<相対的明示事項>

退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項

臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項

③労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

安全及び衛生に関する事項

⑤職業訓練に関する事項

⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項

表彰及び制裁に関する事項

休職に関する事項

これらについては定めがある場合に明示しなければいけないので、
例えば賞与について支給される会社は多いかと思いますが、
これは裏を返せば賞与について定めず支給しなくても問題ないということですね!

何を明示すべきかが分かったところで、明示の方法にも触れておきます。

まずは絶対的明示事項については書面の交付により明示をしなければならないとしています。

ですが、「昇給」に関する事項については除かれています。

絶対的に明示しなければいけない事項ではあるけど、
昇給については書面で明示しなくてもいい
ということになっています。

これについては書面で残すと、急な経済事情の変化等に対応できなかったりするからといった感じで落とし込んでおきましょう!
しかし…昇給についてトラブルになった時に書面のおかげでスムーズに解決できる助けになるという一面もあるかと思います。

他に書面で明示すべきものとしては、
上述した無期転換申込みに関する事項と、無期転換後の絶対的明示事項(昇給に関する事項除く)になります。

ちょっとややこしいかもしれませんが、無期転換申込権が発生する人については…

無期転換申込みに関する事項と、無期転換後の絶対的明示事項と相対的明示事項を明示してね

相対的明示事項を除いて、それらは書面にして交付してね

順序立てて理解しておきましょう!

ちなみに「書面の交付」と書いておりますが、
一般的には厚労省のホームページにあるような「労働条件通知書」が使われていたりするかと思います。

ほかに労働者が希望した場合には、

・ファクシミリ(FAX)を利用して送信する方法
・電子メール等の方法(それらを出力して書面を作成できるものに限る)


これらの対応も認められています。

それでは…
労働契約を結んだ後に「聞いてた労働条件と違う」となった場合はどうなるでしょうか?

これについても規定があります↓

明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
この場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

(少しだけ改変しております…)

労働者側の対抗措置のようなものです!

後半の部分は帰郷旅費と呼ばれていたりするものです。

就職のために実家から引っ越してきたけど、
労働条件が相違していたから労働契約を即時解除して14日以内に実家に帰るといったような状況です。

この場合に、
もし一緒に引っ越した同居の親族がいたなら、その人たちの旅費についても負担する必要があります。

ここの旅費というのは交通費のみならず食費や宿泊費等も含まれます!

それでは復習の条文です。
(労働契約の相違による即時解除と帰郷旅費が合体したバージョンになります…)

第十五条
①使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
②前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
③前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

まとめにいきましょう!

まとめ

第15条労働条件の明示

  • 絶対的明示事項を覚えておく(残りは相対的明示事項といった認識で)
  • 無期転換申込権が発生するケースで追加される絶対的明示事項も理解しておく
  • 絶対的明示事項(昇給について除く)は書面で交付しなければいけない(無期転換申込権が発生するケースに注意)
  • 労働条件が相違していた場合は即時解除でき、14日以内に帰郷する場合は帰郷旅費を使用者が負担する

今回は実務の面で入社する側、受け入れる側の双方にとって大事なテーマだったかと思います!

ご意見、ご指摘等ございましたらお問い合わせよりいただけましたら幸いです。

今回もお疲れ様でした!

次回は第14条契約期間等について解説していきたいと思います。

また次回もよろしくお願いします!

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