こちらの記事では主に社労士試験を受験される方に向けて労働基準法について解説していきます!
細かく学習範囲を分けて、詳しい解説や難しくない言い回しを心がけておりますので、
社労士試験を初めて受験される方にもおすすめです。
<こんな人が書いています>

・4度目の挑戦で社労士試験に合格
・都内某所の社労士法人にて10社程の入退社等の手続きや相談を担当しておりました
・現在は社会保険労務士として開業してお仕事募集中です!(ホームページはこちら)
今回は第18条強制貯金の禁止についてです!
少々ボリュームがあるので頑張ってまいりましょう!
強制貯金の禁止

条文はこちら。
第十八条
使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
本条にはまだ続きがありますが、順を追って見ていきます!
ポイント
「労働契約に附随して」とは、雇う条件としてといった意味で、
雇用するんだから社内預金をしなさいといったようなことは禁止されています。
「貯蓄の契約をさせ」というのは、
使用者の指定する銀行等と貯蓄の契約をさせるといったような、使用者ではない第三者との契約のことです。
そして「貯蓄金を管理する契約」というのは後述する社内預金と通帳保管のことをいいますが、
労働者の委託を受けて金銭の管理をすることは禁止されていません。
上記のようなものを「任意貯蓄」といいますが、一定の規制がありますので詳しく見ていきましょう!
任意貯蓄(社内預金と通帳保管)

第18条の続きの一部で任意貯蓄について措置が規定されています。
第十八条
~
②使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。
③使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。
~
⑤使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。
社内預金と通帳保管に共通する措置について書いてあります。
④は社内預金に関連するものなのでその時に!
ポイント
まず社内預金と通帳保管については下記の通りです。
社内預金→使用者自身が預金を受け入れて直接管理する
通帳保管→使用者が受け入れた預金を労働者の名義で金融機関等に預けて、その通帳等を使用者が保管する
これらに共通する措置が上記②、③、⑤です。
②について前半に長々と書いていますが、労使協定を締結していわゆる労働基準監督署長に届け出しないといけませんということです。
労使協定というのは…
条文にもある通り過半数労働組合がある時はその労働組合、それがない時は過半数代表者との書面による協定のこと
(今後出てくる36協定もこれの一種です!)
③はそのままですが、貯蓄金管理規程を定めていつでも見られるように置いておきましょうといったことです。
⑤もそのままなのですが、労働者がやっぱり返して…となった時はちゃんと返還しましょうねということです。
「遅滞なく」というのは、何が何でもすぐにといったことではなく、何かちゃんとした理由があるなら遅れてもいいよとったニュアンスです!
といっても、いたずらに預金を返すのを遅らせてはいけませんよ…
それでは社内預金ならではの措置について…
まず労使協定を締結して届出しなければいけないと上述しましたが、それには下記の事項を定めなければいけません。
・預金者の範囲
・預金者1人あたりの預金額の限度
・利率と利子の計算方法
・預金の受入れと払い戻しの手続き
・保全の方法
上記の内容や具体的な取扱いについて貯蓄金管理規程に定めなければいけません。
利子としては年5厘(0.5%)以上の利率にしなければなりません。
(利率の上限については定めなし)
上述した条文で省いていた④に「利子を一定以上にする」といったようなことが書いてあります。
そして、毎年3月31日以前1年間における預金の管理状況を4月30日までに労基署長に報告する必要があります。
前年度の管理状況を4月の間に記録等をまとめて教えてねという感じです!
社内預金で取らなければならない措置をまとめると、
・労使協定に一定の事項を定める
・それを貯蓄金管理規定に規定する
・年5厘以上の利子をつける
・労基署長に報告する
このようになります。
一方の通帳保管の場合の措置としては、貯蓄金管理規程に所定の事項を定めなければいけません。
その所定の事項としては、預金先の金融機関名、通帳の保管方法、預金の出入れの取次の方法等があります。
それでは労働者が返してほしいと言ったのに使用者が拒否した場合はどうなるでしょうか…
ご安心ください、それも下記のように本条に定められています!
第十八条
~
⑥使用者が前項の規定に違反した(使用者が返還しなかった)場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。
⑦前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。
(一部に加筆しております)
どれだけ返還を拒否しても、結局のところは労基署長が出てきてくれて労働者に返還されることになるということです!
最後に罰則です↓
6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
それでは第18条全てを繋げた条文を頑張って復習しましょう!
要点を絞って改変等しております!
第十八条
①使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
②使用者は、労使協定を締結し、これを行政官庁に届け出なければならない。
③貯蓄金管理規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。
④社内預金の場合には利子(年0.5%以上)をつけなければならない。
⑤使用者は、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。
⑥使用者が返還を拒否した場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁は、使用者に対して、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。
⑦前項の規定により貯蓄金の管理を中止すべきことを命ぜられた使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。
細かい部分は本文でもう一度確認お願いします!
まとめ

第18条強制貯金の禁止
- 労働契約の条件として強制的に社内預金をさせてはいけない(任意貯蓄はOK)
- 任意貯蓄において、労使協定の締結・届け出、貯蓄金管理規程の規定等の必要な措置がある
- 社内預金の場合の措置として、利率は年5厘(0.5%)以上にする、3月31日以前1年間の預金の管理状況を4月30日までに行政官庁に報告する等がある
- 使用者が預金の返還請求に応じない場合、行政官庁が貯蓄金管理の中止を命じて、使用者は貯蓄金を返還しなければならない
ちなみに派遣労働者の使用者は、派遣元となるので派遣先の使用者が貯蓄金の管理をすることはできません。
務めている所が良い金利で社内預金の制度があると嬉しいですね…
今回もお疲れ様でした!
ご意見、ご指摘等ございましたらお問い合わせよりいただけますようお願い申し上げます。
次回からは解雇に関する分野に入りまして第19条解雇制限について解説します。
お読みいただきましてありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします!

